紙ブグロはてな

新しいものについ飛びついてしまった後悔を綴ることになりそうな気がするけれどならないかもしれないブログ。

ニップの起源が知りたい

円形オセロとも呼ばれる「ニップ」というゲームをご存知だろうか。ルール的にはオセロ/リバーシとほぼ変わりないのだけれど、盤に角がないため、ゲーム終盤になっても形成が読みにくい面白いボードゲームだ。

www.nakajim.net

 

自分は、ダイソーリバーシを改造してニップを作ったりした。

 

このゲーム、少なくともオセロよりも古い。オセロの生みの親とされる長谷川五郎氏もオセロに先行する「はさんだら取る」タイプのゲームの先行者として「源平碁,リバーシ,ニップなどの名がありました。」(「オセロの打ち方」長谷川五郎著)と、リバーシとともに列挙している。それなりに巷間にひろまったゲームなのであろうと思う。

Wikipediaで探してみる

しかしニップについての情報は少ない。数少ない記述を探してWikipediaのオセロの過去記事をたどると、ソース不明の情報に行き当たる。下記は、最も情報が多かった頃の記事。

オセロやリバーシと類似したゲームに「ニップ(Nip)」がある。リバーシを含む20種類のゲームのセット「ゲームスタジアム20(トゥエンティ)」、同じく11種類のゲームで持ち運び可能なセット「ゲームスタジアム11(イレブン)」等の中のひとつとしてハナヤマから発売されている。円形の盤とオセロやリバーシと同様の両面が白と黒の駒を使用する。基本的なルールはオセロやリバーシと変わらないが、隅が存在しないので全ての方向(縦、横、斜めに加えて円周も)の駒を返すことができる。そのため終盤でも展開が非常に読みにくい(「隅を押さえれば勝ち」のパターンは通用しない)。

交点の数はオセロやリバーシの升目より少ない52個である。初期配置はリバーシと同じくd4とe5に黒駒を置く。外周を円形にしているため、図のa3-b3やc1-c2などの交点が接近している場所は駒が置きにくいという欠点がある。

このニップは登場時期は不詳だが、「ニップゲーム」として太平洋戦争以前から存在していた(1933年実用新案登録187845号、考案者は松本彌助) 。当初は白黒ではなく白赤の駒で遊ばれており、また盤も円形ではなく、通常のオセロやリバーシの盤面の a1, b1, a2, g1, h1, h2, a7, a8, b8, g8, h7, h8 の升目を除いた八角形状の形のものが用いられていた。また、外周全体を一直線のように扱うルールはなく、8つの隅を持つ後述の「88オセロ」に近いものであったと考えられる。

かつてはハナヤマがニップ単品で販売していたが、1996年発売の持ち運び可能な11種類のゲームのセット「ゲーム11(イレブン)」(製造中止、「ゲームスタジアム11」の前身の一つ)から順次、前述したように他のゲームとのセット商品となり、単品販売がなくなった。ちなみにニップとは、英語で「挟む」を意味する。
 オセロ (遊戯) - Wikipedia

ニップの起源については不詳とあるが、実用新案登録がなされ、盤面が当初は現行と違う*1ものであったことが記述されている。

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太平洋戦争以前から存在していたなど、ニップ初期に関する部分の記述が気になるので、誰がどういう経緯で加筆したものかログを辿ってみると、とあるIPユーザーの記述に行き当たる。下記は、そのユーザーによる3度の更新である。 

このニップは時期は不祥だが、「ニップゲーム」として太平洋戦争以前から存在していたことは確実である<!-- http://page11.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/n38930965 -->。

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「オセロ (遊戯)」の版間の差分 - Wikipedia

記事中にコメントとして、ヤフーオークションのURLがある。おそらく、盤面の形状や石の色がわかるような商品が出品されていたのであろう。しかし今となってはトレース不可能である。

このニップは時期は不祥だが、「ニップゲーム」として太平洋戦争以前から存在していたことは確実である(実用新案登録 187845 号)

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「オセロ (遊戯)」の版間の差分 - Wikipedia

 このニップは時期は不祥だが、「ニップゲーム」として太平洋戦争以前から存在していた(1933年実用新案登録 187845 号、考案者は松本彌助) 

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「オセロ (遊戯)」の版間の差分 - Wikipedia

立て続けに実用新案の注釈が書き足されている。ヤフオクのパッケージ画像に掲載されていたものに気付いて書き足した、といったところだろうか。 


もう少し古い記述を遡る。下記もIPユーザーによる記述。ソースはない。

このニップは、時期は不祥だが、ハナヤマがリバーシよりも逆転スリルのあるものをというコンセプトで、リバーシをベースに独自に円形のボードを開発して誕生したものだという。当初はニップ単品で販売されていたが、1990年代半ばから先に書いた他のゲームとのセット商品となり、単品販売がなくなった。

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「オセロ (遊戯)」の版間の差分 - Wikipedia


「誕生したものだという。」とあるが、[誰?]テンプレートをつけたくなる。このユーザーの所持する商品にそういう記述があったのかもしれない。

 
実用新案を取った人物は「松本彌助」とあるが、これはハナヤマの関係者だろうか。それとも、角が4つあるニップを円形のニップに改変したのがハナヤマなのだろうか。

実用新案の番号を元に調べられそうだが、出願時期が古すぎてウェブ上の検索では出てこない。

メーカーに尋ねてみる

自分が調べた限りでは、ニップの商品を出していたのはハナヤマ以外には見つかっていない*2。おそらく、ニップについて最も詳しい企業はハナヤマのはず。

 
実は以前、ニップについてハナヤマのホームページの問い合わせフォームに質問を送ったことがあるのだが、残念なことにニップの起源について情報を持っていないということであった。過去商品のパッケージを手当たり次第漁ればあるいは記録があるかもしれないが、それを調べるのはハナヤマの業務ではないので仕方がない。

書籍を探ってみる

おもちゃや遊戯の記録は、書籍などの形できちんと残らないことがしばしばある。だから、些細なことでも書籍に載っていると大変嬉しい。黒井千次氏の「老いのつぶやき」に、若干ニップについて触れているくだりがある。

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老いのつぶやき - 黒井千次 - Google ブックス

記述によると、現在流通しているニップではなくて、角になる箇所が8つあるタイプの古いほうのニップゲームだ。黒井氏(1932年生まれ)が子どもの頃とあるから、1940〜1950年頃のニップゲームは、こういう形だったのだろう。

この書籍のおかげで、ソース不明だった盤面が違う当初の古いニップの存在が、どうやら間違いないことがはっきりした。

この頃は升目の中に石を置いていたであろうことも読み取れる。ただ、角の升目の欠ける分量が違う。Wikipediaの記述だとそれぞれの角から三つずつ、合計12個の升目を除くとあるが、この本では除く升目の数が少ない。

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ほかに、Google Booksで下記の書籍にニップについて記載があるのを見つけた。

日中戦争日記 - 村田和志郎 - Google ブックス

どんなゲームかはわからないが、五目並などと並んで二人で楽しむゲームとして普及していた様子が感じられる。時期的にも整合する。おそらく、こちらも古いタイプのニップであろう。

 

円形の特徴的なボードの誕生については、未だ分からないままである。戦後にハナヤマが取り組んだ仕事ではないかと想像しているけれど、ほとんど記録がない。どなたかゲーム研究家の方で、ニップに詳しい方はいないものだろうか……。

*1:この盤面だと、ひっくり返されない角が8つあることになり、現行の角のないニップとはゲーム性が逆になる。88オセロやOcto Reversiを参照のこと。

*2:源平碁などはハナヤマ以外の(というかメーカー不明の)商品が見つかる。

スティーブ・ウォズニアックのファーストネームについて

ウィキペディアのスティーブのファーストネームに疑義がある

ウォズのファーストネームはステファンなのか、それともそもそもスティーブンなのか、という論争は日本では昔からあった。ウィキペディアでは現状ステファンになっており、生まれた時はステファンとつけたが母親がスティーブンに変えたと記載されている。だが、このくだりに疑問がある。

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スティーブ・ウォズニアック - Wikipedia

ウィキペディアがステファンを採用しているのは、「アップルを創った怪物」(井口耕二 訳)に根拠を求めている。

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「スティーブ・ウォズニアック」の変更履歴 - Wikipedia

「アップルを創った怪物: もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝」の該当ページを見てみよう。

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アップルを創った怪物: もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝 - スティーブ・ウォズニアック - Google ブックス

これを読みの根拠とするのは、かなり危ういと思う。

原文の「iWoz」の同じ箇所を見てみると、ここはフルネームの発音については触れず、スペリングの話しかしていない。

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iWoz: Computer Geek to Cult Icon - Steve Wozniak - Google ブックス

英語版のウィキペディアでも、stephanとstephenの綴り/スペリングのことを言っているだけで、発音についての話題は見当たらない。

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Steve Wozniak - Wikipedia

参照元の書籍を読めば、母親が名前を変えたという記述も事実でないことがわかる。誰のどういう間違いかは不明だが、「Stephen」と名付けたつもりが、誤って「Stephan」で登録されてしまっている、という話でしかない。

そもそも、彼が自分の名前が「stéfən」系の発音で言った記録はないと思う。私の知る限り、ずっと「stíːvən」で通している。ほんとうに「stéfən」が本来の名前の発音で、「stíːvən」がその慣用読みでしかないのなら、名前のスペルの時に触れてもおかしくないはずだ。

スティーブンと名付けるつもりで「stephen」の綴りで登録したはずだったのが、スティーブンともステファンとも読まれる「stephan」として謝ってスペリングされた……という話をしていたものが、訳する際にわかりやすくするために「ステファン」と書いたものではないのか。

一般論としてのStephenについて。

ちなみにウィズダム英和辞典だと、このように、断り書きがない限り「Stephen」はスティーブンと読むのが普通。

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ランダムハウス英和大辞典でも、読み方の例示は一つ。

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特に断りのない場合、米国ではStephenはスティーブンと考えるのが通常であろう。

具体的に、訳者の井口さんに質問をしてみた。


すくなくとも、「アップルを創った怪物: もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝」を、名前の読みの根拠として使用するのは不適切であることは明らかになったと思う。
というわけで、ウィキペディアのウォズの本名がステファンであるという記述は疑わしい。ところがウィキペディアには半端に権威があるので、ウィキペディアに書いてあるからと素直に信じる人が多い。ここから自動的に引用しているサイトも少なくない。いい加減な記述が半端な権威を伴って広がっていくことに、大きな不安と憤りを覚える。

横向きのギターコードダイアグラムが苦手という話

横向きのコードダイアグラムがちょっと苦手だ。
C7
こういうやつ。日本では一般的なタイプ、なんだけど、自分はどうにもこれが微妙に肌に合わない。読み取れるし、実際使うし、レイアウトの都合に合わせてこの向きのコードダイアグラム を描いたりもするけれど、なんというか……頭の中にあるコードの形と違うような印象があるのだ。

欧米だとしばしば縦向きのコードダイアグラムを見かける。

こっちの方が、自分のしょうには合っている。
実際には物理的に一番下にあるはずの1弦が、横向きのコードダイアグラムでは上にあるのが、なんというか、くすぐったいのである。縦向きのコードダイアグラムだと、その辺の違和感が少なくなる。
初めてギターを教わったときに、大学の先輩が対面で教えてくれたのも影響があると思う。ナットが左、1弦が下に見えているものをお手本として、自分はコードを覚えた。

だから個人的には、逆向きの方が自分の頭の中のコードのカタチと合っているように思う。

自分の頭の中にあるコードの形状のイメージは、こちらの方が近いような気がする。気がする。

なんなら鏡写しの方があっているかもしれない。

実際のところ、向きや方向はこの鏡写しのものが一番正確だと思う。演奏者の視点はネックの後ろ側から向こうを見ているわけで、ネックを透かして見るこの形の方が「現実に即している」と言えなくもない。

なんてことを言っては見たものの、逆向きや裏向きのコードダイアグラムを長く使っているわけではないので、実際にこれを使おうとすると、既存のものと混乱してわけがわからなくなってしまうであろうことは容易に予想がつく。おそらく、縦型のダイアグラムを愛好していくんだろうなあ。

ちなみにこの記事ではコードダイアグラムを全部SVGで手打ちしてみた。画像にするより圧倒的に消費データ量が少ない。でもちと面倒臭い。

ウクレレコードフォームの幾何学

知っている人にとっては、何を当たり前のことを……という内容なのかもしれないんですが。

こないだ、ウクレレのコードの整理をしてたんです。体系的に覚えたり、自分専用の歌本を作ったりするのに有用かなーと思って。
で、下記のような形でコードを図にしていくわけなんです。この事例だとBコードのメジャートライアドとマイナートライアドが、指板上の低い位置から順に並べてあるわけです。
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見ていて、あれ……前から思ってたけど、妙に似た形が多いよなあ……。

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3面ダイス

あんまりうまくいかないのはわかっているのだけれど、紙を折って3面ダイスを作る方向でのデザインをつい考えてしまう。
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今回試作したのはこれ。
いわゆるD6の雰囲気を出せないか、というのが狙いで、1つ目が折り目のところに「ドミノ」デザインを配置してみたらどうか、というもの。もう一つが、上向きに見える方のダイスの目を読んでください、というもの。横に大きく数字が表示してあるので、ある意味大きなお世話じゃないか、という気もする。単に数字があるだけで充分なんだけれど、なんというか、雰囲気が欲しいのだ。
3つ目4つ目は折り目のところに刻みのように点をおけばわかり易かろう、という発想。

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展開図はこんな感じ。

試作して試投を繰り返してみて、しみじみ「偏るなあ」と思った。
最初はのり付けした場所の重さの影響かな、とも思ったけど、いじってみて紙の膨らみや凹みの方が如実に影響が出るのではないか、と思った。膨らんでいる面はなかなか底面にならない。

とまあ、わかってはいたのだけれど、手作りの紙サイコロは、面白いけど偏りやすい(し、歪みやすい)ので実際のゲームに使うには不向きということがよくわかった。三角柱の形状の棒を用意して、そのサイズに合わせた出力紙を貼り付ける、というやり方で多少精度が出るかなあと思う*1


が2回ずつ刻んである3面機能ダイスが欲しいんだけど、どこかで安く売っていたりしないかなあ。

*1:ただ、三角柱は実際のところあんまり転がらなくて、ちょっとつまらない。六角柱で作ったほうがいいかもしれない。それだと鉛筆を加工するのが手軽だろう

#ハーフギャモン のどうぶつギャモンを手軽に自作する

ハーフギャモンのどうぶつギャモン、ふと思い立ってまた作ってみた。
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ペンギンさんvsカモメさんの、うみどりギャモンだ。
駒は動かしやすいよう立体タイプにしてみたけれど、やはり紙だと軽くて油断してるとすぐズレちゃう。

PDFデータはこちらからダウンロードしてください。
今回は作り方の説明が付属していません。厚手の用紙に印刷して切り貼りしたら大体できます。簡単です。ただ、駒を最低でも16個作らないといけないので、そこはちょっと面倒臭いです。


ボードのデザインを空と海にしたので、最初はことりさんvsくじらさん、というTwitter落ちてるギャモンにしようかと考えたんだけど、くじらさんが8頭もいたらことりさんが太刀打ちできないのでやめにしました。

駒、小さなカード立てを利用して作るという手もあるなあ。今回は紙サイズの効率に合わせてみに三角ポップ的な形状にデザインしているけど、他にも駒の作り方は色々工夫のしようがあるような気がする。今度試してみよう。

#どうぶつしょうぎ とか #ハーフギャモン とか

コンパクトなゲームとかを見るのが好きだ。パズルとかも、小さい世界で奥深いようなものがとてもいいと思う。
それで、「囲碁パズル4路盤」とか「9マス将棋」とか、小さくて素敵だなあ……なんていろいろ調べていた。

これらはどちらかというと、対戦よりもパズルよりな構造で、二人プレイにはちょっと不向きだと思った。9マス将棋は一応、先手と後手に分かれて対戦してください、ってことになっているけど、開始図によっては一目で決着、みたいなものも混ざっている。二人対戦でこのくらいコンパクトなのはないかなあ、と考えると、囲碁系だと「ななろのご」があるんだけど、これは露骨に子ども向けなデザイン。まあ、もともと子ども向けの囲碁入門として開発されているので仕方ないとはいえ……。

将棋の方も、「どうぶつしょうぎ」がミニマムな対戦ものとして存在しているんだけど、かなり子ども向けにつくられているデザインで、微妙に手が伸びないなあ、と思っていた。子ども向けに可愛らしくデザインされている「どうぶつしょうぎ」を、伝統ゲームっぽいデザインで遊べないだろうか……。

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