紙ブグロはてな

新しいものについ飛びついてしまった後悔を綴ることになりそうな気がするけれどならないかもしれないブログ。

リバーシとオセロについて調べたことと思うこと

オセロとリバーシというよく似たゲームがある。
とてもよく似ているので、多くの人が疑問に思うらしい。検索をすると「違いは何か」という記事が幾つか出てくる。例えば下記のような。
nlab.itmedia.co.jp
この記事の中で紹介されている中島哲也オセロ八段は、リバーシにははっきりしたルールが定められていなかったというようなことを言っているけれども、これはかなり難癖の類だと思う。

このあたりの影響を受けてか、ウィキペディアの現時点のオセロの記事でも、リバーシのルールについて

ゲーム内容については、基本的にオセロと同様であるが、初期のリバーシでは、

  • 盤面の大きさが定まっていない。
  • 初期配置が定まっていない。
  • 打てる箇所がない場合の扱い(パスになるのか即座に負けになるのか)が定まっていない。

などルールに曖昧な点があったとされている。
オセロ (遊戯) - Wikipedia

と書いてある。
極めて疑問である。

リバーシは「ルールの曖昧なゲーム」ではない。

リバーシは元々の発売元が現在存在しないため、元締めとなる組織がなく、そのためローカルルールなどが自由に広まっているだけで、ルールは明確に存在していた。中島哲也氏は今はなき「日本リバーシ協会」の理事長であった*1。もし日本リバーシ協会が健在であれば、日本でのリバーシの「公式ルール」を定着させることも可能だったわけで、「ルールが曖昧だ」などという話など出てこなかったはずなのだが……。

さて、その明確に定まっているリバーシのルールのひとつとして、日本リバーシ協会のルールが簡明なので、ここに紹介しておく。すでに存在しない協会なので、インターネットアーカイブのキャッシュだが。
JRF - リバーシのルール
画像が見えなくなっているけれど、名称でわかると思う。

盤面のサイズについては、こちら(https://web.archive.org/web/20010406215743/http://www.reversi.net/reversi/)に記載がある。
基本的なサイズが8×8であることが明記されている。そしてバリエーションとしてパーフェクトリバーシとオクトリバーシを推奨している。これらは、オセロでも公式に発売された「グランドオセロ」とか「88オセロ/エイトスターズオセロ」と同様のものだ。
リバーシの盤面サイズが曖昧だ、ということになるならば、オセロも曖昧であることになってしまう。そうではない。曖昧なのではなく、バリエーションがあるだけだ。

初期配置が決まっていないのも、ルールが曖昧なのではない。
類例をあげると、過去の囲碁の「互先事前置碁法」を想起してほしい。かつて囲碁は星の位置に白石・黒石をあらかじめ置くというルールだったが、そのルールに比較して現行の囲碁は、「初期置石の配置が決まっていない曖昧なルール」というだろうか。
打てる場所がない場合についても、後述した資料にもある通り、普通にパスになる。曖昧な点はない。

そもそも伝統ゲームではルールのゆらぎというのは珍しくない。オセロだって家庭や児童会などで行われている場合はきちんとしたルールではなく、それぞれのローカルルールが場を仕切っていることは珍しくない。基本的なルールさえ定まっていれば、細かいルールは遊ぶにあたっては問題ではないからだ。
また、基本的なルールを拡張したり、改変した別バリエーションを作るのは、「ゲームのルールが曖昧」というようなネガティブなものではなく、むしろゲームの幅を広げるゲームの豊かさを示すものだ。
先日紹介したニップも、リバーシから生まれた豊かな果実の一つだ。
ニップの起源が知りたい - 紙ブグロはてな

現代のオセロとリバーシの本質的な違いは、初期配置の扱いだけだ。

先ほど紹介した日本リバーシ協会のルールは、リバーシの現代のルールとして極めて一般的なものと思われる。オセロとのルールの大きな違いは、初期配置がクロスに固定なのか、そうでないのかという違いしかない。

少し遡って、オセロ登場直前のリバーシのルールを確認してみよう。
1969年刊 Board and Table Games From Many Civilizations (Board and Table Games From Many Civilizations. Vol. I. 2nd ed : Bell, R. C. : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive )から引用する。

f:id:hi_kmd:20181212170612p:plain

draughts-boardは、いわゆるチェスやチェッカーなどで使用される8×8のボードだ。
白と黒のプレイヤーが最初に中央の4マスに石を置き、それ以降は互いを挟んでひっくり返すというルールは、先ほど紹介したリバーシ協会の「オリジナル式」と同一のルールとみてよいだろう。

日本での事例では、もっとぐっとさかのぼって、1907年刊の世界遊戯法大全 (世界遊戯法大全 - 国立国会図書館デジタルコレクション)を見てみよう。

f:id:hi_kmd:20181212164723p:plain

こちらだと黒と赤のプレイヤーが互いに意思をはさみ合うルールとなっている。こちらでは初期配置がクロス固定になっているのが興味深い。打てる場所がない場合についても「何處にも敵の駒を挟むやうな處が無ければ、自分は休んで敵に続けさせる」とパスについての記述がある。

この伝わったリバーシが日本では「源平碁」という形で流行した*2
流行した、と断言するのは、「源平碁」は様々なパッケージでいろいろな会社から発売されたことが確認できるからである。

なお、過去に日本で流行った「源平碁」の商品には、「パラレル固定」のルールになっているものと「クロス固定」のルールになっているもの、「自由配置」のものの全てがある。下記ブログにてルールが見られるので参照されたい。
s.webry.info
ameblo.jp
blogs.yahoo.co.jp

初期配置が固定されているのが多いのは、日本に輸入される過程で、紹介の簡便さを求めた結果ではないかと思われる。
このように様々なバリエーションの商品が発生したのもの「ルールが曖昧である」という誤解を招いた原因であろう。おそらく公的なライセンスを受けたわけでもない商品であったから、「公式の厳密なルール」が届くわけでもなかった。とはいえ商品それぞれについてはルールが確定しているものとして完結しているわけで、大きな問題はない。

当初のリバーシのルールと現行との大きな違い。

さて、先ほど日本リバーシ協会のルールとオセロのルールでは、本質的には初期配置の扱いしか違いがないと書いた。
しかし、文献を遡ると、現代では忘れられてしまった大きな違いが実はある。

1890年刊 Reversi and go bang
archive.org
リバーシ五目並べについて書いた本である。詳細なルールが記載されている。

ポイントは、黒と白は互いに32個ずつ石を持つ、と記述されている部分である(現行のリバーシでは、石は互いの共有とされるのが普通である)。これが何を引き起こすか。

f:id:hi_kmd:20190207153020p:plain
https://archive.org/details/reversigobang00berk/page/n11

最後に石が足りなくなった時、足りなくなった側は強制的にパスとなり、足りている方が連続して打つことができるのである。これはゲーム性に大きく関わる違いだ。

1894年刊 The Book of Table Games
books.google.co.jp
こちらの書籍でも、「Each player being provided with thirty-two men」とあるので、それぞれが32個石を持つというルールに違いはなさそうである。

このルールが記述されなくなっていくのは、おそらく「相手にパスを強いる」という本来自らを有利に導くテクニックが、終盤に相手の逆転を許す隙に成ってしまうという矛盾が好まれなかったからではないかと思う。
というわけで、19世紀の頃のリバーシのルールと現行の日本リバーシ協会のルールの間には、持ち石が固定かどうかという大きな違いがあることが分かった。

なお、オセロでは石が共有であることは案外知られていなくて、下記のような質問が発生したりしている。
オセロのルール。相手にパスが続いたので、自分が続けて打つ場面が... - Yahoo!知恵袋

リバーシの元になったアネクゼイションというゲームについて

先ほど紹介した「世界遊戯法大全」に、「當時は『附け足し』(Annexation)というふ名で盤面も十字形であつた」という記述がある。
調べてみると、当時の流れを記述したページが幾つか見付かる。
tametheboardgame.com

どうも、ウォーターマン(Lewis Waterman)がReversiという名前で8×8のボードのゲームを発売してヒットしたのだが、そのゲームのキモの部分がモレット(John W. Mollett)が作ったAnnexationというゲームと同一なので、パクリではないかと裁判になったらしい。なおAnnexationのボードは割と特殊な形をしている。
f:id:hi_kmd:20190207132939p:plain
最終的に「石で挟んでひっくり返す」という重要な部分が同じであるということでモレットは裁判に勝って、おなじReversiという名前を使って、同様の商品を発売するようになったようだ。

下記のページに、ウォーターマンとの裁判に勝って「Reversi」の名前を使用できるようになったモレットの「ANNEXATION」のパッケージ写真とボードが確認できる。「Reversi」の名称を使用しているので、8×8のボードである。ルールの記載されている説明書も見られて有用だ。石は「白と赤」だがルールブックにはBlackとRedとある。
www.gamesboard.org.uk

この裁判についてはGoogle Booksに訴訟の記録らしきものが幾つかあるのだけれど、英語力の都合で詳しく調べていない。識者に補足を願いたい。

おそらく、ANNEXATION or Riversiの権利が生きていたら、オセロは普通に訴えられて、そちらの版元から「ANNEXATION or Othello」という商品が発売されていたことだろう。ありがたいことに、オセロの発売時期には、ANNEXATIONやRiversiの諸権利は消尽していた。

オセロを発明した長谷川五郎氏は、リバーシをどのくらい知っていたのだろうか。

下記のはせら氏のブログに、過去の長谷川五郎氏の発言が転載されている。
hasera.blog.jp
「赤と白の源平碁,リバーシ,ニップなどの名がありました。」と、過去のゲームについての記述がある。
はせら氏はリバーシに言及した上で、『オセロは自分が考案した』と主張していたのであり、だからこそ、彼が自力でオセロを考案したという主張は信用に値する」と言っている。

「実業の日本」の77巻5号に、オセロについての記事がある。「新ゲーム・オセロの売れっぷり/p23」。これはインターネットでは公開されておらず実業の日本. 77(5)(1811) - 国立国会図書館デジタルコレクション国会図書館に直接行くと閲覧できるようだ。
Google Booksで少し確認できる。文字化けしているが、オセロについて「昔あった『源平碁』というゲームを原型にして、二年がかりで完成し、試しにやらせたところ、たちまち社内に流行し、さらには係長氏のお得意先の病院などにも広まるようになって、これはイケるとなったもの。」……と読める。
books.google.co.jp

このブログに載っている雑誌「太陽」にも、「オセロゲームは、源平碁をもとにした世界的大ヒット発明だ。」と書いてある。
ameblo.jp

このころの長谷川氏は、普通にオセロの原型について公言していたことがわかる。

のちの書籍になるにつれ、長谷川氏はリバーシや源平碁・ニップの存在に触れなくなる。現在のオセロ公式サイトでのオセロ誕生の記述は下記の通り。
www.megahouse.co.jp
「当時の長谷川少年が、碁石を使って生み出した遊びが、オセロの原型です。オセロの石が黒白なのは、碁石がもとになっているからです。」碁石については言及しているのに、かつて原型だとされていた「源平碁」には全く触れず。

ボードゲーム・オセロが生まれる遥か以前、明治時代に、リバーシという、石をはさんでひっくりかえすイギリスのゲームが日本に伝わったことはありましたが、現在、みなさんが認識しているオセロというゲームのルールや姿かたちをつくりだしたのは長谷川氏で、それが、日本、そして世界中に「オセロ(Othello)としてひろまっています。緑色の盤や、盤の中央のマスに黒白交互に並べてスタートするといったルールは、すべてオセロがつくったものです。

リバーシの歴史とルールを知っている人ならば、この説明が噴飯物であることがわかるはず。ギリギリ嘘にならないように「緑色の盤や、盤の中央のマスに黒白交互に並べてスタートするといったルールは」と限定しているけれど、特に後半の「盤の中央のマスに黒白交互に並べてスタートする」は、オリジナルのリバーシでも固定でないだけで同じだし、何より「盤の色」と「初期配置」の二つだけ例にあげて「すべてオセロがつくったものです」と称するのは意図的に誤読を狙った悪質な記述と感じられる。

長谷川氏が整えた使いやすいゲーム用具の価値はとても高いし、それを普及し世界に広めた功績はとても大きなものだろう。オセロでの若干改善されたルールはリバーシのモダンバージョンとして積極的に世界で受け入れられている。しかし、先行事例への敬意を見せない姿勢は評価できない。



なお、はせら氏のブログでは下記の記事もとても参考になる。
hasera.blog.jp
hasera.blog.jp

その他、ググって見つけたリンク

1957年の「娯楽大百科」という書籍に源平碁/リバーシの説明があるとのこと。源平碁の「石」は厚紙などを丸く切って使えと、自作が前提なところが面白い。
grnrokko.seesaa.net

まとめ

ニップの記事でも書いたけれど、「遊び」の歴史は、あまり記述されないまま「かつては当たり前のようにみんな知っていたけれど、今は誰も知らない」となりがちだ。
インターネットが生まれて以降の歴史ですら、「日本リバーシ協会」の誕生と消滅についてなど、「関係者のみぞ知る」状態になっている。いまさら当時の話なぞ明らかにしたくない、という人も多いのかもしれない。
ともあれ、自分は現状のリバーシの語られ方は、歴史的事実を踏まえないものが少なくないと思うし、きちんと再評価されるべきだと思うので、わかる範囲でまとめて共有たいと思ったのだ。

*1:インターネットアーカイブJapan Reversi Federation

*2:と同時に、おそらく初期の「ニップ」も書籍にその記述が残るレベルでそれなりに流行した。

ニップの起源が知りたい

円形オセロとも呼ばれる「ニップ」というゲームをご存知だろうか。ルール的にはオセロ/リバーシとほぼ変わりないのだけれど、盤に角がないため、ゲーム終盤になっても形成が読みにくい面白いボードゲームだ。

www.nakajim.net

 

自分は、ダイソーリバーシを改造してニップを作ったりした。

 

このゲーム、少なくともオセロよりも古い。オセロの生みの親とされる長谷川五郎氏もオセロに先行する「はさんだら取る」タイプのゲームの先行者として「源平碁,リバーシ,ニップなどの名がありました。」(「オセロの打ち方」長谷川五郎著)と、リバーシとともに列挙している。それなりに巷間にひろまったゲームなのであろうと思う。

Wikipediaで探してみる

しかしニップについての情報は少ない。数少ない記述を探してWikipediaのオセロの過去記事をたどると、ソース不明の情報に行き当たる。下記は、最も情報が多かった頃の記事。

オセロやリバーシと類似したゲームに「ニップ(Nip)」がある。リバーシを含む20種類のゲームのセット「ゲームスタジアム20(トゥエンティ)」、同じく11種類のゲームで持ち運び可能なセット「ゲームスタジアム11(イレブン)」等の中のひとつとしてハナヤマから発売されている。円形の盤とオセロやリバーシと同様の両面が白と黒の駒を使用する。基本的なルールはオセロやリバーシと変わらないが、隅が存在しないので全ての方向(縦、横、斜めに加えて円周も)の駒を返すことができる。そのため終盤でも展開が非常に読みにくい(「隅を押さえれば勝ち」のパターンは通用しない)。

交点の数はオセロやリバーシの升目より少ない52個である。初期配置はリバーシと同じくd4とe5に黒駒を置く。外周を円形にしているため、図のa3-b3やc1-c2などの交点が接近している場所は駒が置きにくいという欠点がある。

このニップは登場時期は不詳だが、「ニップゲーム」として太平洋戦争以前から存在していた(1933年実用新案登録187845号、考案者は松本彌助) 。当初は白黒ではなく白赤の駒で遊ばれており、また盤も円形ではなく、通常のオセロやリバーシの盤面の a1, b1, a2, g1, h1, h2, a7, a8, b8, g8, h7, h8 の升目を除いた八角形状の形のものが用いられていた。また、外周全体を一直線のように扱うルールはなく、8つの隅を持つ後述の「88オセロ」に近いものであったと考えられる。

かつてはハナヤマがニップ単品で販売していたが、1996年発売の持ち運び可能な11種類のゲームのセット「ゲーム11(イレブン)」(製造中止、「ゲームスタジアム11」の前身の一つ)から順次、前述したように他のゲームとのセット商品となり、単品販売がなくなった。ちなみにニップとは、英語で「挟む」を意味する。
 オセロ (遊戯) - Wikipedia

ニップの起源については不詳とあるが、実用新案登録がなされ、盤面が当初は現行と違う*1ものであったことが記述されている。

f:id:hi_kmd:20181210185319p:plain

太平洋戦争以前から存在していたなど、ニップ初期に関する部分の記述が気になるので、誰がどういう経緯で加筆したものかログを辿ってみると、とあるIPユーザーの記述に行き当たる。下記は、そのユーザーによる3度の更新である。 

このニップは時期は不祥だが、「ニップゲーム」として太平洋戦争以前から存在していたことは確実である<!-- http://page11.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/n38930965 -->。

f:id:hi_kmd:20181210151640p:plain

「オセロ (遊戯)」の版間の差分 - Wikipedia

記事中にコメントとして、ヤフーオークションのURLがある。おそらく、盤面の形状や石の色がわかるような商品が出品されていたのであろう。しかし今となってはトレース不可能である。

このニップは時期は不祥だが、「ニップゲーム」として太平洋戦争以前から存在していたことは確実である(実用新案登録 187845 号)

f:id:hi_kmd:20181210151624p:plain
「オセロ (遊戯)」の版間の差分 - Wikipedia

 このニップは時期は不祥だが、「ニップゲーム」として太平洋戦争以前から存在していた(1933年実用新案登録 187845 号、考案者は松本彌助) 

f:id:hi_kmd:20181210151548p:plain

「オセロ (遊戯)」の版間の差分 - Wikipedia

立て続けに実用新案の注釈が書き足されている。ヤフオクのパッケージ画像に掲載されていたものに気付いて書き足した、といったところだろうか。 


もう少し古い記述を遡る。下記もIPユーザーによる記述。ソースはない。

このニップは、時期は不祥だが、ハナヤマがリバーシよりも逆転スリルのあるものをというコンセプトで、リバーシをベースに独自に円形のボードを開発して誕生したものだという。当初はニップ単品で販売されていたが、1990年代半ばから先に書いた他のゲームとのセット商品となり、単品販売がなくなった。

f:id:hi_kmd:20181210151938p:plain

「オセロ (遊戯)」の版間の差分 - Wikipedia


「誕生したものだという。」とあるが、[誰?]テンプレートをつけたくなる。このユーザーの所持する商品にそういう記述があったのかもしれない。

 
実用新案を取った人物は「松本彌助」とあるが、これはハナヤマの関係者だろうか。それとも、角が4つあるニップを円形のニップに改変したのがハナヤマなのだろうか。

実用新案の番号を元に調べられそうだが、出願時期が古すぎてウェブ上の検索では出てこない。

メーカーに尋ねてみる

自分が調べた限りでは、ニップの商品を出していたのはハナヤマ以外には見つかっていない*2。おそらく、ニップについて最も詳しい企業はハナヤマのはず。

 
実は以前、ニップについてハナヤマのホームページの問い合わせフォームに質問を送ったことがあるのだが、残念なことにニップの起源について情報を持っていないということであった。過去商品のパッケージを手当たり次第漁ればあるいは記録があるかもしれないが、それを調べるのはハナヤマの業務ではないので仕方がない。

書籍を探ってみる

おもちゃや遊戯の記録は、書籍などの形できちんと残らないことがしばしばある。だから、些細なことでも書籍に載っていると大変嬉しい。黒井千次氏の「老いのつぶやき」に、若干ニップについて触れているくだりがある。

f:id:hi_kmd:20181210164510j:plain

老いのつぶやき - 黒井千次 - Google ブックス

記述によると、現在流通しているニップではなくて、角になる箇所が8つあるタイプの古いほうのニップゲームだ。黒井氏(1932年生まれ)が子どもの頃とあるから、1940〜1950年頃のニップゲームは、こういう形だったのだろう。

この書籍のおかげで、ソース不明だった盤面が違う当初の古いニップの存在が、どうやら間違いないことがはっきりした。

この頃は升目の中に石を置いていたであろうことも読み取れる。ただ、角の升目の欠ける分量が違う。Wikipediaの記述だとそれぞれの角から三つずつ、合計12個の升目を除くとあるが、この本では除く升目の数が少ない。

f:id:hi_kmd:20181210185757p:plain

ほかに、Google Booksで下記の書籍にニップについて記載があるのを見つけた。

日中戦争日記 - 村田和志郎 - Google ブックス

どんなゲームかはわからないが、五目並などと並んで二人で楽しむゲームとして普及していた様子が感じられる。時期的にも整合する。おそらく、こちらも古いタイプのニップであろう。

 

円形の特徴的なボードの誕生については、未だ分からないままである。戦後にハナヤマが取り組んだ仕事ではないかと想像しているけれど、ほとんど記録がない。どなたかゲーム研究家の方で、ニップに詳しい方はいないものだろうか……。

*1:この盤面だと、ひっくり返されない角が8つあることになり、現行の角のないニップとはゲーム性が逆になる。88オセロやOcto Reversiを参照のこと。

*2:源平碁などはハナヤマ以外の(というかメーカー不明の)商品が見つかる。

スティーブ・ウォズニアックのファーストネームについて

ウィキペディアのスティーブのファーストネームに疑義がある

ウォズのファーストネームはステファンなのか、それともそもそもスティーブンなのか、という論争は日本では昔からあった。ウィキペディアでは現状ステファンになっており、生まれた時はステファンとつけたが母親がスティーブンに変えたと記載されている。だが、このくだりに疑問がある。

f:id:hi_kmd:20180926140549j:plain
スティーブ・ウォズニアック - Wikipedia

ウィキペディアがステファンを採用しているのは、「アップルを創った怪物」(井口耕二 訳)に根拠を求めている。

f:id:hi_kmd:20180926140557j:plain
「スティーブ・ウォズニアック」の変更履歴 - Wikipedia

「アップルを創った怪物: もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝」の該当ページを見てみよう。

f:id:hi_kmd:20180926140601j:plain
アップルを創った怪物: もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝 - スティーブ・ウォズニアック - Google ブックス

これを読みの根拠とするのは、かなり危ういと思う。

原文の「iWoz」の同じ箇所を見てみると、ここはフルネームの発音については触れず、スペリングの話しかしていない。

f:id:hi_kmd:20180926140605j:plain
iWoz: Computer Geek to Cult Icon - Steve Wozniak - Google ブックス

英語版のウィキペディアでも、stephanとstephenの綴り/スペリングのことを言っているだけで、発音についての話題は見当たらない。

f:id:hi_kmd:20180926140609j:plain
Steve Wozniak - Wikipedia

参照元の書籍を読めば、母親が名前を変えたという記述も事実でないことがわかる。誰のどういう間違いかは不明だが、「Stephen」と名付けたつもりが、誤って「Stephan」で登録されてしまっている、という話でしかない。

そもそも、彼が自分の名前が「stéfən」系の発音で言った記録はないと思う。私の知る限り、ずっと「stíːvən」で通している。ほんとうに「stéfən」が本来の名前の発音で、「stíːvən」がその慣用読みでしかないのなら、名前のスペルの時に触れてもおかしくないはずだ。

スティーブンと名付けるつもりで「stephen」の綴りで登録したはずだったのが、スティーブンともステファンとも読まれる「stephan」として謝ってスペリングされた……という話をしていたものが、訳する際にわかりやすくするために「ステファン」と書いたものではないのか。

一般論としてのStephenについて。

ちなみにウィズダム英和辞典だと、このように、断り書きがない限り「Stephen」はスティーブンと読むのが普通。

f:id:hi_kmd:20180926140619j:plain

ランダムハウス英和大辞典でも、読み方の例示は一つ。

f:id:hi_kmd:20180926140615j:plain

特に断りのない場合、米国ではStephenはスティーブンと考えるのが通常であろう。

具体的に、訳者の井口さんに質問をしてみた。


すくなくとも、「アップルを創った怪物: もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝」を、名前の読みの根拠として使用するのは不適切であることは明らかになったと思う。
というわけで、ウィキペディアのウォズの本名がステファンであるという記述は疑わしい。ところがウィキペディアには半端に権威があるので、ウィキペディアに書いてあるからと素直に信じる人が多い。ここから自動的に引用しているサイトも少なくない。いい加減な記述が半端な権威を伴って広がっていくことに、大きな不安と憤りを覚える。

横向きのギターコードダイアグラムが苦手という話

横向きのコードダイアグラムがちょっと苦手だ。
C7
こういうやつ。日本では一般的なタイプ、なんだけど、自分はどうにもこれが微妙に肌に合わない。読み取れるし、実際使うし、レイアウトの都合に合わせてこの向きのコードダイアグラム を描いたりもするけれど、なんというか……頭の中にあるコードの形と違うような印象があるのだ。

欧米だとしばしば縦向きのコードダイアグラムを見かける。

こっちの方が、自分のしょうには合っている。
実際には物理的に一番下にあるはずの1弦が、横向きのコードダイアグラムでは上にあるのが、なんというか、くすぐったいのである。縦向きのコードダイアグラムだと、その辺の違和感が少なくなる。
初めてギターを教わったときに、大学の先輩が対面で教えてくれたのも影響があると思う。ナットが左、1弦が下に見えているものをお手本として、自分はコードを覚えた。

だから個人的には、逆向きの方が自分の頭の中のコードのカタチと合っているように思う。

自分の頭の中にあるコードの形状のイメージは、こちらの方が近いような気がする。気がする。

なんなら鏡写しの方があっているかもしれない。

実際のところ、向きや方向はこの鏡写しのものが一番正確だと思う。演奏者の視点はネックの後ろ側から向こうを見ているわけで、ネックを透かして見るこの形の方が「現実に即している」と言えなくもない。

なんてことを言っては見たものの、逆向きや裏向きのコードダイアグラムを長く使っているわけではないので、実際にこれを使おうとすると、既存のものと混乱してわけがわからなくなってしまうであろうことは容易に予想がつく。おそらく、縦型のダイアグラムを愛好していくんだろうなあ。

ちなみにこの記事ではコードダイアグラムを全部SVGで手打ちしてみた。画像にするより圧倒的に消費データ量が少ない。でもちと面倒臭い。

ウクレレコードフォームの幾何学

知っている人にとっては、何を当たり前のことを……という内容なのかもしれないんですが。

こないだ、ウクレレのコードの整理をしてたんです。体系的に覚えたり、自分専用の歌本を作ったりするのに有用かなーと思って。
で、下記のような形でコードを図にしていくわけなんです。この事例だとBコードのメジャートライアドとマイナートライアドが、指板上の低い位置から順に並べてあるわけです。
f:id:hi_kmd:20180130193319p:plain
見ていて、あれ……前から思ってたけど、妙に似た形が多いよなあ……。

続きを読む

3面ダイス

あんまりうまくいかないのはわかっているのだけれど、紙を折って3面ダイスを作る方向でのデザインをつい考えてしまう。
f:id:hi_kmd:20171206111757j:plainf:id:hi_kmd:20171206111821j:plain
今回試作したのはこれ。
いわゆるD6の雰囲気を出せないか、というのが狙いで、1つ目が折り目のところに「ドミノ」デザインを配置してみたらどうか、というもの。もう一つが、上向きに見える方のダイスの目を読んでください、というもの。横に大きく数字が表示してあるので、ある意味大きなお世話じゃないか、という気もする。単に数字があるだけで充分なんだけれど、なんというか、雰囲気が欲しいのだ。
3つ目4つ目は折り目のところに刻みのように点をおけばわかり易かろう、という発想。

f:id:hi_kmd:20171206155757j:plain
展開図はこんな感じ。

試作して試投を繰り返してみて、しみじみ「偏るなあ」と思った。
最初はのり付けした場所の重さの影響かな、とも思ったけど、いじってみて紙の膨らみや凹みの方が如実に影響が出るのではないか、と思った。膨らんでいる面はなかなか底面にならない。

とまあ、わかってはいたのだけれど、手作りの紙サイコロは、面白いけど偏りやすい(し、歪みやすい)ので実際のゲームに使うには不向きということがよくわかった。三角柱の形状の棒を用意して、そのサイズに合わせた出力紙を貼り付ける、というやり方で多少精度が出るかなあと思う*1


が2回ずつ刻んである3面機能ダイスが欲しいんだけど、どこかで安く売っていたりしないかなあ。

*1:ただ、三角柱は実際のところあんまり転がらなくて、ちょっとつまらない。六角柱で作ったほうがいいかもしれない。それだと鉛筆を加工するのが手軽だろう

#ハーフギャモン のどうぶつギャモンを手軽に自作する

ハーフギャモンのどうぶつギャモン、ふと思い立ってまた作ってみた。
f:id:hi_kmd:20171130154239j:plain
ペンギンさんvsカモメさんの、うみどりギャモンだ。
駒は動かしやすいよう立体タイプにしてみたけれど、やはり紙だと軽くて油断してるとすぐズレちゃう。

PDFデータはこちらからダウンロードしてください。
今回は作り方の説明が付属していません。厚手の用紙に印刷して切り貼りしたら大体できます。簡単です。ただ、駒を最低でも16個作らないといけないので、そこはちょっと面倒臭いです。


ボードのデザインを空と海にしたので、最初はことりさんvsくじらさん、というTwitter落ちてるギャモンにしようかと考えたんだけど、くじらさんが8頭もいたらことりさんが太刀打ちできないのでやめにしました。

駒、小さなカード立てを利用して作るという手もあるなあ。今回は紙サイズの効率に合わせてみに三角ポップ的な形状にデザインしているけど、他にも駒の作り方は色々工夫のしようがあるような気がする。今度試してみよう。